“純真一心パワー”を教えて下さった主婦の方(2018年49歳)(2018年49歳)

こってりした暑さが居座る、初秋の朝。
ローカル線にガタゴト揺られ、八方除で有名な神社へ、ご祈祷を受けに向かった。

ここ最近の私は、積年の想いにボウボウと燃えていた。
『終の棲家を探し始めて13年。パソコンで検索しすぎて腱鞘炎になったし、相当数の内見もした。だから、もういい加減「ここ!」と思える物件に出逢っても良いだろう!私は相性の良い物件に引っ越したいのだ!引っ越すのだ!』

そんな渇望から生じた心の業火は、暑さ厳しき折、自分でもむせ返るほどの熱を放ち、『でもさ、八方除けの神様にお願いするのは、ちょっとお門違いなのでは?』といった冷静な判断をも焼尽。ピント外れのまま駅を降り、欲望でテラッテラになりながら、徒歩5分の神社さんに猛アタックすることになったのだった。

だがしかし。その勢いも貪欲さも、あっさりと人生最大の宿敵「暑さ」により消沈。
頭まっ白の放下《ほうげ》状態となり、もつれそうな足でフラフラと手水舎→ものすごく立派な神門→御社殿(参拝するところ※)へ。
(※後に知ったのだが、ご祈祷を受ける際は参拝しなくても良いらしい)


👆とても立派な「神門」。
ちなみに撮影日は翌年(2019年)1月。

👆御社殿。左手にはご神木。(撮影は2024年5月)




そして、お賽銭箱の前でふと気づく。
『おおっ!?なんだかここだけやけに涼しいな!』

原因は、おでこが全開になる程の“強い向かい風”だった。
自然の風のようだが、御社殿奥から勢いよくビュービューと吹き出ている。
で、これがまた清涼で非常に気持ち良い。隣で参拝中のご婦人方も、「あら~気持ちいいわね~!」と佇んでいる程だ。


『何でここだけこんなに風が吹いるんだろ?』
ちょっと不思議に思いながら、しばし風の恩恵に授かると、あっという間に汗と服がカラリ。おかげで息も吹き返し、清々しい気分でご祈祷受付へ。
15名ほどの方々と共に、無事受けることが出来たのだった。

さて、ご祈祷終了後。出口にて自分のお札が入った紙袋を受け取る。
早速ゴソゴソ。
「結構色々入ってるな!……なになに?お守りに、御神土、お箸も!」
想像以上に盛り沢山な授与品にワクワクしていると、【神苑】と書かれたリーフレットと入苑券が目に留まった。
「おお!なんだなんだ、この美しき純日本庭園は!」

紙袋から取り出し、詳しく読み進める。
……ふむふむ、日本庭園が広がる神苑は、御社殿の奥に位置しており、神社の起源に関わり深い神聖な池もある。これまでは禁足地だったが、現在はご祈祷を受けた者のみ入れる、と……。
「なにっ!ならば、これから入苑出来るではないか!おっ!おまけに、庭園を眺められる茶屋もあるぞ!」

当時、趣深い空間に多大な憧れを抱いていた私は、瞬間、優雅にお茶をいただいている己の姿がふぁぁ~っと脳裏に広がった。
「こ、これは神様のお導きかも!是非とも訪れねば!」
電撃に打たれたようにハッとして顔を上げると、ちょうど視線の先に神苑の案内板を発見!……しかし、なんと本日休苑日!

「うえぇ、なんたるタイミングの悪さ!全然お導きじゃなかったよ……」
力なく案内板を前に立ち尽くす。……だが、間髪入れず「券さえあれば、後日でも入苑可能」との案内表記が目に飛び込んで来たので、ひとまず再訪を固く誓い、神社を後にした。

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2週間後。一層神苑への想いを滾《たぎ》らせながら、神社を再訪した。

……いや~それにしても生憎の天候である。
空はどんより鉛色。朝9時だというのに夕方のように薄暗く、異変寸前のようなただならぬ様相だ。
でもって、9月末だっていうのに、このじっとりヘビーな蒸し暑さよ!息苦しいったらありゃしない!
全身も、服のままサウナに入ったように汗ベッタリ……。とにかく不快極まりない。

見渡せば、広い境内に参拝客は数える程。
芸能人もよく訪れると言われる人気の神社なのだが、まあ平日の朝だし、なにしろこの気象条件だからであろう。
「なんで私、こんな日に来る気満々になったのか……」
手水舎で思わず遠い目。そのまま神門の下で一礼をする。
と、まさにその時。バラバラと激しい雨が落ちて来た。

「あらら、やっぱり降ったかー」
天気予報をチェック済だった私は、雨宿りをしながら、慌てず騒がずバッグから折り畳み傘を取り出した。
『うーん、でも思ったより早く降り出しちゃったな~。雨の中、参拝と散策か~』
あたためて今日という日に来ようと決意した自分に疑問を抱き、傘の骨をポキポキ伸ばす。……その最中、ふと右背後が気になった。

うっすら漂い来る気配……。チラと右後方を振り返ると、視界の隅に主婦らしき女性が半身映った。
私よりわずかに年上だろうか。少し離れた所で同じく雨宿りをしておられる。……が、呆然とした佇まいから察するに、参拝に来られたものの傘を持っておらず、立ち往生されているようだ。

このシチュエーションに思うところがあった私。少しの勇気で半歩近づき、声をかけた。
「もし良かったら、一緒に傘に入ってお参りしませんか?」
「えっ!」
相当ビックリされた女性。手をブンブン振り、
「そっ、そんな悪いですから!駐車場に戻れば車の中に傘がありますし、もう少し待ってみます……」
とすかさずご辞退された。

『……まあ、そりゃそうよね。見知らぬ人に突然勧誘されたんだから……』
私は、己の怪しげな行動に内心苦笑いしつつ、女性のご意思を尊重し、「そうですか!」とニッコリ一礼。『では、お先に失礼して……』と傘を開いた。

そしたら!ウソみたいなタイミングで、笑っちゃうほど雨が強まったのだ。
これでは駐車場にも戻れない。
私は実際ちょっと笑いながら、再び声をかけた。
「止みそうにないので、どうぞどうぞ!」
「ええっ!いいんですか!そんな……見ず知らずの私を……」
「どうぞ、ご遠慮なく!」
……と言うことで、出逢ったばかりの二人は、相合傘でお参りをしたのであった。

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参拝後、雨が和らぐことを願いながら神門まで戻り、一旦傘を閉じる。
ところが!和らぐところか、凄まじい勢いで悪化。
鋭い雨脚は、バチバチと激しく地面を打ちつけ、あまつさえ雷までもがゴロゴロと野太い声で参戦し始めた。

「いやあーすごいですね!」
天の荒ぶりをただただ呆然と眺めながら、笑い合う。
ここまで来ると、逆に清々しい。私に至っては、カタルシス的快感までもが起こっていた。

「……私はこれから神苑に行きますが、雨が酷いので駐車場までお送りしますよ!」
「そ、そんな!とんでもない!それは申し訳ありませんので!」
女性はまたもや強く遠慮なさったが、今回はひと呼吸置いたのち、ちょっと言いにくそうにはにかんでこう付け加えられた。
「……それに、もしかしたら『もう少しここに居なさい』ってことかもしれないので、雨が収まるのを待ってみます」

「ああ!そういうのってありますよね!分かります!!」
激しく同意した私。
その食いつきっぷりが女性の心を開放したのか否か、それからちょっと不思議なお話を始められたのだった。

「実は、少し前に息子が交通事故で瀕死の状態になったんです。回復の見込みが無いとまで言われて……。でも、ほぼ毎日こちらの神社でお参りしたら、奇跡的に回復したんです」
「ええ!すごい!良かったですね!」
「はい、お医者さんを始め、皆さん本当に驚かれていました!だから、ここはご利益ありますよ!大丈夫!」
女性は、胸の前でギュッとこぶしを握り、力強く励まして下さった。

……私はとても嬉しかった。
いただいた太鼓判はもとより、素晴らしい奇跡が起こっていたことが。
『誰にも平等に奇跡は起こるのだ……。どんなことがあっても、皆愛され導かれているのだ……!』
感動がドミノ倒しのようにサーッと胸一面に広がった。
と同時に、なにかの合図かの如く雷雨は急速に弱まり、空はわずかに明るさを取り戻し始めた。

女性は空を見上げ、にこやかに告げた。
「もうそろそろ雨も上がると思いますから、神苑へどうぞ!本当にありがとうございました!」
その晴れやかなエネルギーに押された私は、ご挨拶をしたのち、ひとり神苑へと向かったのだった。

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神苑への道中、雨はすっかりふわふわとした霧雨に変わっていた。
『ああ、良かった。これならあまり濡れずに駐車場に辿り着けそうだな』
ホッとしながら先へ進むと、間もなく瀟洒で風情ある外門が姿を現した。
その異空間的雰囲気に、胸が高鳴る。

くぐれば、すぐ左手に小さな受付。
券を提示して簡単な案内を伺った後、早速近くの手水で心静かに清め、斜め前方の神聖なる池へいそいそと向かう。
……その背後で、かすかに呼び止められているような声がした気がした。
発信地はどうやら外門あたりからのようだ。

『はて、係の方かな?なんだろう。もしかして、あんまり池に近寄っちゃいけないのかな……』
小首をかしげ、ゆっくり振り向くと……何と!傘をさした先程の女性が、門の外から半身を乗り出して呼びかけられているではないか!
目が点状態で、慌てて駆け寄る。

「どっ、どうしたんですかっ!?なんでここに!?」
「ハアハア……す、すみません!車に戻ったんですけど、このまま帰っちゃいけない気がして。……お名前を聞かなくっちゃ、とか……。ご一緒したいと思って追いかけてきました!ハアハア……」
「ええーーーっ!!」

激しく息を切らしておられる女性は、遠く離れた駐車場から急いで走って来られたようで、心身の乱れから『なんだかよく分からないが、とにかく急いで来た!』といった必死さがありありと見て取れた。
そして、ポッキリ折れた傘の骨も、その一心不乱な情熱を物語っているような……そんな気がした。

「そ、そうなんですね!……でもここは、ご祈祷を受けて券をもらった人しか入れないんです……。どうしよう……」
「以前に何度もご祈祷はしていただいてるんですが……。どうしよう……」
なんでも、息子さんの件でご祈祷を受けてはいたものの、神苑には興味が持てず、券は毎回捨ててしまっていたのだそうだ。

『……こ、これはどうしたものか……』
私は、困惑の表情を浮かべる女性を前に、ピンボケした目の奥で最適解を模索した。
『ここは神苑を諦めて、この方とどこかでお茶でもした方が良いのだろうか。でも……』
堂々巡りする脳。驚きと私情でパンパン状態なので、一向に名案があがって来ない。
そして、無言のままフリーズする二人……。

そこへお声がかかった。
「これも折角のご縁ですから、ご一緒にどうぞ!!」
受付の方であった。
おそらく、傍らでそれとなく見ておられたのであろう。思わぬ助け舟を出して下さったのだ。

これには二人ともビックリ仰天。手を叩いて喜び合い、口々にお礼を告げた。
殊に女性は、天に舞い上がらんばかりに歓喜され、「さっきお会いしたばかりなんですが、ご一緒したくて戻って来たんです!駐車場から!だから、良かった~!ありがとうございます!本当に!」と全身全霊で感謝。
ひっそり座っておられた係の方も、自然と目を細められたのだった。

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そんなこんなで、係の方のご厚情により無事一緒に入苑した二人。
……けれど、何故か女性はうつむきがち。
先ほどの歓喜はどこへやら、気もそぞろといった面持ちで、この静かで精気溢れる緑の景色を愉しんでおられないご様子なのである。

それは単にご興味が無いからかもしれないし、駐車場から走破されたお疲れなのかもしれないし、この展開への動揺が残っておられるのかもしれないが、いずれにせよ、入苑したからにはどうしても茶屋に入りたかったので、少々強引気味にご了承を得たのだった。

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念願の茶屋はしっとりと佇んでいた。
カラカラと引いた扉の先に広がるは、風雅な非日常の世界。
他にお客さんの姿はなく、漂う閑寂さが私の心を一層俗世から切り離してくれた。

そして、なんと言っても壁面いっぱいの窓に映る日本庭園の麗しさよ!
しとどに濡れ艶めく木々の緑。それらを割って淙々と流れ落ちる、多段の滝。その白く繊細な水筋は、趣ある情景に映え渡り、とりわけ名状しがたい美しさである。

窓の曇りが、この日の湿気の凄まじさを物語っています😅
  


「うわぁーー、素敵ーー!」
詠嘆と共に、思わず目が釘付けになる、我々お疲れ主婦。
日々の雑念が吹っ飛んだかのようにパァァァッ~と高揚し、夢見心地で滝を一番よく眺められるテーブルに着席。お抹茶セットを注文したのち、ようやくフーッとひと息ついた。

気づけば、女性も本来の姿を取り戻し始めたようで、この場を愉しむ余裕もチラホラ。
「本当にきれい……」とあらゆる角度から窓の景色を撮影したり、目を輝かせて室内を堪能したり……。普段なかなか身を置くことのない世界に、ウキウキしておられる模様だ。
『ああ、お誘いしてよかった~』しみじみホッとする。

するとその後、ますますリラックスされた女性は、ためらいながらも「実は……」と、更なる“神がかり的不思議体験(確かに聞き手を選ぶような内容)”を発信。
また、お会計の際には「さっきお会いしたばかりなんですけど、ご一緒することになって!!」と、茶屋の方々にも経緯を一生懸命ご説明され、皆を笑顔にさせた。
……そう、女性はどこまでもピュアで真っすぐで、不思議なエネルギーに満ち溢れた方であった。

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その後、茶屋を出て外門へ戻り来た二人は、受付の方にあらためてお礼を告げた。
雨は殆ど上がっている。もう傘の出番はなさそうだ。
来た道を辿る。どことなく言葉少な気な二人は、お祭の後のような独特な空気感に包まれていた。

途中、出逢った神門を再びくぐった時。女性はすぐ脇にある“小さな屋舎”の存在を示し、控えめな口調で大好きなのだとおっしゃった。
立派なお賽銭箱も置かれた、その屋舎。私も来る時目に入っていた筈なのに、スコトーマ(心理的盲点)により全く認識出来ていなかった。

「中を見てみて下さい!」
なにか言いたげに微笑む女性に促され、ずずいっと近寄って中を覗くと……そこには、見事な白馬とお猿さんの彫像が!

「すごーーいっ!」
まるで動き出しそうな生き生きとした造形美と愛らしさに、感動しひと目惚れした私。目を輝かせて女性を振り返った。
「ね、すごいですよね!!」
彼女の笑顔もキラキラと輝いていた。

生命感あふれるお姿は、感動の美しさ🥹!
のちに調べたところ、こちらは「神馬舎」とのこと。

どや!この神々しいお姿✨!




二人はこの屋舎に敬意を払い、再び並んでお参りを始めた。
私は、今日のこの不思議な出逢いに深く感謝した。
そして、隣で熱心に手を合わせておられる、唯一無二の“純真一心パワー”を持つこちらの女性が、どうかこれからも健やかで幸せであるよう心から祈った。




余談その1:真のミラクルメーカーは…

なんともミラクル&ドラマティックだったこの日。
女性は私のことを「ミラクルメーカー」だと思われたようだが、私は逆に女性ご自身がそうなのだと思った。
「ミラクルは、純真で一心な人に起こるもの」
そう思わせて下さったのは、まさに彼女だったのだから。


余談その2:「駐車場→神苑」の距離を知る

神苑を出た後、女性のご厚意で駅まで車で送っていただくことになった(恐悦至極…)。
なので、駐車場までご一緒したのだが、実際その道のりは、走るにはやはり遠く、『ここから懸命に走って来られたのだ……』と胸が一杯に。
そして、タイミングよく神苑入り口で再会出来た奇跡をあらためて思ったのだった。



ご参考までに、境内地図↓



余談その3:実はずっと課題だったこと

「急な土砂降りの雨で困っておられる方に、傘を差しかける」こと。
実は、それまでの人生においてちょっとした課題でもあった。

と言うのも、そのような状況の方々を何度も目撃し、例えば信号待ちで『傘に入っていただこう!』と思ったとしても、屋根があるところまで小走りしている方を『待って!そこまで傘をさしますから!』と追ったとしても(ちょっと怖い😅?)、『急に言われても驚くよね…』と途中で断念しており、結果その後悔が積もりに積もって、私の中で課題となったのだ。

だから、本文中の女性との出逢いでようやく達成出来たことがとても嬉しかった。そんな意味でも非常に意義深い一期一会だったのである。


余談その4(全くの余談):ご祈祷受付での出来事

ちなみに、こちらの神社。ご祈祷時に読み上げられる祈願文は、受付の際神職さんに相談し、代筆していただく。
で、この時私は張り切って「良い引越し先がなかなか見つからないので、自分に合った地域と良い物件に出逢いたいです!」と告げたのだが、瞬間明らかに神職さんはフリーズされた。

……ペンを握りしめて下を向き、「ええと……」と長考し苦悩される神職さん……。どうやら奏上用の祈願文として、端的かつスマートにまとめにくいご様子である。
その悩まし気なお姿に、戸惑い、祈願の行く末を見た気がした私。
『なんかもう申し訳ないから、心願成就とかでいいか……』と思い直した。……と、まさにその時!突然天啓に打たれたようにビビッと来られた神職さんが、「こうしましょう!」と力強く断言。ペンをスラスラ走らせ、ようやく顔を上げられた。
その表情は、1日分のお勤めを終えたようになんとも晴れやかであった……。

こうして、生みの苦しみの末、堂々の完成を迎えた “オリジナル祈願文”は、ご祈祷中に我が名と共に高らかと読み上げられた。
しみじみありがたかった。しかし、他の方々の四字熟語祈願文と違い、少々具体的な文章だったので、ちょっと恥ずかしくもあった。
いやはや、神様に具体的なお願いを伝えるのもなかなか難しいものである。




余談その5(全くの余談):神様に歓迎されていたかも?

*ご祈祷後、ご神木の周りで「願いは叶うかな~」とぼんやりエネルギーチャージをし始めた直後、空からふわふわと真っ白い羽が舞い落ちて来た。
*後日たまたまインターネットでみかけたのだが、拝殿奥から風が吹いていたり、参拝中に急な雨に見舞われたりするのは、神様(龍神様)に歓迎されているのだとか。そうだとしたら、本当に嬉しい。



余談その6(全くの余談だし、長いです):不運の仮面をかぶってやって来た、真の神恩

実は、こちらの神社でご祈祷を受けたのは、この時が2度目である。
1度目は、本エピソードから遡ること18年程前。新車だった車本体「交通安全祈願」でお祓いしていただいたのだが、なんとその半年後、廃車やむなしの事故が勃発したのだ。

愕然とした私は、神様に不服を申し立てまくった。
しかし、後々振り返って考えると、それは「人間万事塞翁が馬」的お導きだったのである。

では、どうしてそう思えるようになったのか?
それには、まず前置きとして、当時暮らしていたアパート(旦那が独身時代から居住。そこそこ広かったので、結婚後とりあえず私も入居し、2年程が経過)の住環境が、私にとって決して良いとは言えなかったことを述べておく。

その不快要素は3つ。
①地域の安全性への不安。
アパートの所在地。そこは、駅から離れた山を切り開いてつくられた、ちょっとした工業地であった。
人影も少なく寂しげで、山の自然が残る場所には不法投棄も多く、乗り捨てられた車が謎の発火を起こし消防車が出動なんて事も。
また、タクシーのおじさんからは「ここら辺は、夜歩く時気をつけたほうがいいよ」といった注意喚起をされるなど、常時気合を入れて暮らさなければならない場所であった。
②昼夜問わずの戦闘機の爆音。
テレビや電話の音声が全く聞こえないわ、夜中に叩き起こされるわと、ストレスフルな日々。
③日常生活が不便極まりない。
買い物や駅までの旦那の送迎など、日々の暮らしが完全に車に紐づいているのも、運転が苦手な私の性に合わず、日々不満を募らせていた。

私はこれら3点を度々訴え「駅近物件」への引っ越しを提案した。
しかし、都度暗礁に乗り上げた。
原因は、そもそも不快に思っていない旦那をその気にさせる良物件になかなか巡り合えなかったことと、駅近物件だと「駐車場代の高さ」がネックになったことにあった。

こうして堂々巡りの日々は続き、私は悶々と暮らした。
一方の旦那はと言うと、この先もカーライフが続くであろうことを見込み、車検を前にノリノリで新車に買い替え(しかも、私には身に余るごつい車種)。
せっかくなのでと「交通安全」のご祈祷を受けたところ、半年後、私ひとりでスーパーへ向かっている途中に車同士の事故が起こり、頑丈だった車体が2/3サイズに。(ちなみに事故のお相手も私も軽傷)
ディーラーさんと話し合った結果、廃車となったのだった。

それからの生活は一変した。
旦那は送迎ナシの通勤が大変になったのとともに、保険会社の進行度に関して事故のお相手とも色々あり、その家には居にくくなった。
切羽詰まった私は、ハンドルに強打して紫に腫れた目をサングラスで隠すという怪しげな姿で、必死に移転先を探した。

そしたら、偶然にも以前から住みたいと思っていた地域(駅からギリギリ徒歩圏内。それまでどの不動産屋さんにも「あの辺には物件が無い」と言われていた)で、良さそうな物件を発見。
車が無いので駐車場の心配も要らず、珍しく旦那も気に入ったため、即契約。

時を同じくして、保険会社もようやく重い腰を上げ、無事円満解決。
車のローンも保険でなんとかなり(確かそうだった気がする)、なにがなんだか分からぬまま、ところてん式に居心地の悪かった地域から離れることが出来たのだった。

とは言え、事故から引っ越し、新生活が落ち着くまでと、かなり大変だったこの流れ。
私は「交通安全を祈願したのに!」という思いがどうしても拭いきれず、正直かなりの期間、こちらの神社にわだかまりを残していた。

しかし、全てが落ち着き、出来事全体を俯瞰して捉えられるようになった時、事故自体は誠に遺憾ではあったが、お相手も私も軽傷であったことなども含め、ようやくご神慮の深さとありがたさをしみじみと感じ入ることが出来るように。そして、「一見とんでもない事でも、必ず正しい方向へと導いてくれているのだ」と強く信じ切れるように……。
神さまの力は本当にすごい。

余談その6の補足:車を手放したことによる心の平安

私のみならず、実は車の運転には余り向いていなかったであろう旦那。
無自覚でちょいちょい危険な運転をしていることが、私はずっと気になっていた。
また、車を所有すること自体も彼の性格に合っていない気がしていたので、車を手放したことで心からの安心も得ることが出来たのだった。



余談その6の余談:同神社でご祈祷を受けた知人女性も!

余談の余談であるが、知人女性も、ご夫婦揃って同神社にてご祈祷を受け、やはりその何カ月か後、ご主人に自動車事故が起こったのだそうだ。
けれど、そのおかげでご主人の転勤がなくなったとのこと。
彼女はその流れを神社のご利益だと信じているし、私も絶対にそうだと思っている。




最後までご覧くださいましてありがとうございます😌
※今回のエピソードは、noteさんの「創作大賞2024」の「エッセイ部門」にエントリーしています。 もしよろしければ、そちらでも😌👉 noteページ
 
尚、内容は同じですが、note、アメブロでも投稿していますので、宜しければそちらでも…😊

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「日常ミニドラマ」 イナダマボ

なぜか見知らぬ人に話かけられやすい私と、なにげなく出逢った市井の皆さんとで紡いだ「思い出エッセイ」を公開中。 それらを通して「人本来の素晴らしさや魅力」「感謝や学び」などをお伝えしてゆけたらと思っています(全100話位)。 一応毎日更新予定😅。noteさんでも同時公開しています😊 どうぞよろしくおねがいします😌