「素」の魅力を教えて下さった店員さん(2014年 45歳)

おしゃれではないが、服が好きである。
いや、服が好きと言うよりは、色んな服を着ることで新たな自分の側面を発見したいのかもしれない。
とにかくいつも、様々なテイストのお店で探し求め続けている。

……が、入店前にちょっと警戒することがある。
それは、「店員さんとのコミュニ―ケーションのずれ」である。

その一因は、多分に「私のスピーディーすぎる買い物スタイル」にあるんだろうなとは思う。
そもそも好みがハッキリしている上に、時間も限られているので、集中してバーッと見ながら、瞬時にバッタバッタと取捨選択したいのだ。

そこでストッパーとなるのが店員さんであり、おまけに有意義なコミュニケーションが生まれないことが多いのである。

それは例えば、
◆定型文エンドレス型:「手にとってみて下さいね」「試着出来ますので」を何度もおっしゃる←何度も言われると集中力がそがれ、買い物魂が萎えてゆく。

◆マニュアル紋切り型:「フリルがかわいいですよね~」←確かにかわいいけど、私に似合わないのは一目瞭然。
「その形、人気なんですよ~」←人気かどうかを全く気にしない。

◆タイミングちぐはぐ型:私が『この服はナシ』と判断して次の服に手をかけているにもかかわらず、『ナシ』の方の商品説明をマイペースに始められる←よくある。



◆あれれ?な対応型:たまにこちらが『じゃあ、そこまでグイグイ来られるのなら……』と、探している服の特徴を伝え、店員さんのピックアップ品を心待ちにしていると、全く合致していないものを自信満々に持って来られる←「無い」と言って下さる方が助かります。
また、素材について質問すると、あやふやな回答が返って来たりとか……。

これらのタイムロスを発生するやりとりが、もはや脅威なのである。

ただし、これらは店員さんがどうこうではなく、相性の問題。
なので、気にしないようにはしているが、余りにも噛み合わない時は、どんなに試着したいものが眼前にぶら下がっていたとしても、早々に店を去ることにしている。
それ程、私にとって買い物のひと時は貴重なのだ。

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このように戦々恐々としたショッピングを繰り返す中、ある日私の心をガッチリ掴んだ店員さんと巡り合う。
場所は、大型駅ビルのセレクトショップ。
大手チェーンストアであり、内装も商品も都会的でハイセンスな雰囲気。
店員さんもシュッとしている方が多く、着こなし方も各自アレンジしたりしてとても素敵だ。

一方その時の私ときたら、仕事上がりで心も身だしなみもヨレヨレ……。
おしゃれ空間に居たたまれないこと甚だしかったため、『ざっと見たら、すぐにお店を出よう!』と、いつにも増してハンガーの服を猛スピードでカチャカチャとめくっていった。

そこへすかさず、「シャツをお探しですか?」と、若き女性店員さん(20代後半くらい?)ご登場。やはりグイグイ話しかけて来られた。
『やれやれ……』と、いつも通り最低限の応対をする。

そしたらなんと、これが意外にも楽しい!
と言うのも、非常に機転の利く面白い方で、商品説明などはそこそこに、私の知らなかったお洗濯のコツなどを教えて下さったり、他愛の無い世間話で楽しませて下さる。そしてしまいには、
「私は裁縫が苦手なので、ボタンが取れたら全部実家に送って、つけてもらってから送り返してもらってます!ガハハ!!」
と、ぶっちゃけトークと猛々しい笑いまで炸裂されたのだった。

共に爆笑する私。……が、オシャレ店の店員さんらしからぬその豪快さに、一瞬だけ目が点になった。
い…いや、笑い方に関しては、私もガハハ笑いするタイプで、初見のおじさまに「豪快だね…」と引かれたこともあるから人のことは言えないが、それにしても、お話の内容ともどもギャップがものすごく意外だったのだ……。

『……いやあ、ちょっとびっくりしたけど、素敵な方だな……』
瞬間、ふっと心が緩み、ますます店員さんが好きなった。
『よし、この方の接客で服を買おう!』
私はそう決意し、さっさと服を購入。店を去った。
楽しいひと時を送れた上に、良い買い物まで出来て大満足であった。

……そうなのだ。買い物は「この人から何かを買いたい」と思う時もある。
だって、買い物は単にモノだけではなく、携わってくれた方のエネルギーや、その時の思い出も一緒に買うのだから。

私はどうせなら楽しい買い物がしたい。
だから、店員さんと会話をするならば、通り一遍ではなく有意義な内容であって欲しい。
そしてその言葉が、店員さんご自身の「素」から発せられたものなら、尚更素敵だと思うし、心がホクホクする。

「素(個性)」は、その人最強の魅力なのだろう。
恐れずにどんどん出していった方が、何だかんだ上手く行くような気がする。
そんなことも学ばせて下さった、店員さん。
ありのままを出して下さったことに感謝なのである。



余談その1:素を出せる人は

「素」を出せる人は、真に強い方だと私は思う。
何故なら、仮に誰かにそれを否定されたり、傷つけられるようなことを言われたりしたとしても、全部バーンと跳ね返して自分を守ることが出来るから。
うーん、素敵だ。


余談その2:真の素(個性)とは?

「素(個性)」と言うと、「人と違うことをする」とか「奇抜なことをする」などと勘違いされることが多いかもしれないが、決してそうではなく、確固たる自分軸をそのまま自然体でさらけ出すことが素(個性)になるのだと思う。だって、もともとひとりひとり全然違うのだから……。




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