仕入れに熱心な店員さんたち(2016年47歳)

爽やかな海風を感じられるような、市内のおしゃれ大型ショッピングモール。
その中にある、まさに「海辺のゆる暮らし」を叶えてくれそうな、とあるショップにて、この日私は自然素材の服を物色していた。

ちなみに、こちらのお店にはたーまに来るのだが、洋服を始めバッグや靴、食器やちょっと変わったインテリア雑貨などが混然と並んでいてちょっと面白い。
店員さんもそんなに声をかけて来ないから、買い物に集中したい私としてはお気に入りの一店なのであった。

という訳で、いつものように自分の世界に入り込み、マイペースに洋服探し。己との対話だけを続ける。

と、そんな無防備状態のところへ、突然背後で大きな声が上がった。
「あっ!!」
『えっ!?』
すわ何事か!?とばかりに素早く振り返ると、声の主はすぐそばで品出し中の若い女性店員さん。しかも、ただならぬ眼光で私のバッグを凝視している。

咄嗟に身構える私。ハッとする店員さん。鼻息荒くおっしゃった。
「あっ!ビックリさせてすみません!お客さまのこのバッグ、仕入れたいと思っているのですが、持ったときのサイズ感が分からなくて、ちょうど迷っている最中だったんです!……そしたら、目の前に急に現れたので、驚いてしまって……」
その目はもうバッグに釘付け。まるで、運命の人に出逢ったような高ぶりようである。

「……な、なるほど」
「あの……それで、すみませんが……ちょっとだけ見せていただいても良いですか!?」
「あ、はい。そう言うことなら、どうぞどうぞ」
「すみません、ありがとうございます!」
興奮が一段落しかけた店員さん。……が、瞬間またもやハッとし、「あ!ちょっと待ってください!」という言葉を残し、慌てて奥のバックヤードへ。
そして、「先輩らしき女性店員さん」を連れて戻って来られた。

急に引っ張って来られた先輩店員さんは、見るからに事態がのみ込めていないご様子で、思いっきり怪訝な表情をされていた。
片や後輩店員さんは、一切構うことなく「この位の大きさですよ!」と、手柄をとったかの如く報告。じっと反応を伺った。

そこでようやく流れを理解した模様な先輩店員さん。一瞬お顔が晴れやかになったのち、真剣チェックを開始。
使用感インタビューなんかもして来られたのだが、それはもはや接客ではなくバイヤーの顔つき。
なんだかこちらが営業しているような、そこはかとない緊張感が漂ったのだった……。

とは言え、お店の売り上げにかかわることなので、使い勝手や機能面の良し悪しをしっかりご報告。その後「良かったら持ってみますか?」とご提案し、お渡しした。

実際手に取られて、ようやくお顔がほころんだお二方。
どうやら、それぞれに解決の糸口を見つけられたようである。
いや~こちらも協力出来て嬉しい……。
……と、うっかり充足感を覚えた私は、購買欲をすっかり忘れ、何も買うことなく、すがすがしい気分で店を去ったのだった……。

その後、しばらくお店を訪れることがなかったので、あの後どう判断されたのかは分からないままだが、いずれにせよ参考になって良かったなと思っている。
それにしても、バッグを観察している時のお二方の表情は、接客では見られない厳しさ。すごかった。
やはり、仕入れは真剣勝負なのである。







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