初めて私個人について言及した店主さん(2012年 43歳)

花盛りの初夏、近所のお花屋さんに立ち寄った。

生活主要ルートの途中にある、こちらのお店。内外スペースを合わせると割と広めで、多種多彩なお花がフレッシュでお手頃価格。
そのため、お客さんもなかなかに多く、私も3年前のオープン当初より、少なくとも月に1度は買い物帰りに寄っていた。
しかし、近頃なかなかタイミングが合わず、この時実に「半年ぶり」の訪問となったのだった。

お店には、常時2~3名のスタッフさんがいらっしゃる。
内訳は、オーナー店主さんである奥さま(推定30代後半。経営はご夫婦共同で、旦那さまは主に仕入れご担当)とパートさん。今日も皆さんお忙しそうだ。

内に外にと、慌ただしく出入りして作業をするのはパートさん。
対して、いつもレジ周りをガッチリ守っておられるのは「逞しきハンサム美女」な奥さまである。
そう、彼女はまさに接客の鬼……(コホンコホン)いや、接客の守護神なのである。

奥さまは、とにかく常に多忙そう。
作業も、次から次へバッサバッサ。しかも超マルチタスクにこなされる。

それは例えば、首に電話の子機を挟んで通話しつつ、合間に電卓を打ち、手早く注文用の花束も作るという離れ業。
しかもその最中、レジ打ちをしているパートさんの接客に鋭い指示を飛ばし、更にお客にも目を配って、必要とあらば声をかけるというハイパーっぷりである。

そのような奥さまの効率主義は、我々お客との会話にも反映され、対“私”に関して言えば、「(切り花の切り口を包んでいる袋に)お水が入ってますから、気を付けて下さい!」とか「(苗に)あまりお水をあげすぎないで下さい」「氷を入れて下さい!(←これだけ言われたので、一瞬「は?」となったが、夏場バラを活ける際のアドバイスだった)」など、端的で事務的なお知らせのみ。
ふと疑問に思ったことをちょっとでも質問し返そうもんなら、「え?」とでも言わんばかりに「塩回答」が返って来るので、帰宅後ネットで調べるのが常である。

だって、なにしろ奥さまはお忙しいし、朝からの力仕事でお疲れなのだ。(ちなみに定型のご挨拶は、気持ちの良いほどハキハキとして下さる)

がっ!そんな奥さま。この日のお会計で、なんと初めて“私個人”について言及されたのである。
「ええ~~っ!!髪型変わりましたね!ものすごく伸びましたよね!?」
「えっ!?」
降って湧いた、いつになく感情たっぷりなイレギュラー会話と、目を見開きまじまじと髪型を見つめる熱視線に、思わず固まる私。
……いやいや、こっちがビックリである。そんな急に腹を割られても……。

しかし、そんなことにはおかまいなく奥様は続けられる。
「確か、前はもっとずっと短かったですよね!!」
「……え、はい……(いつのことだろ?)。伸ばしてみようと思って……」
「今もうすごく長いですもんね……!イメージ変わりましたよ~!(しげしげ……)」
「そうですか。えへへ……(←どう変わったんだろう?と思いながらも、塩回答のトラウマにより質問できず)」

で、この時一番驚いたのが、『え!?今までのあの事務的なやりとりだけでも、存在を認識されてたんだ私!』ということ。
あらためて、「接客の守護神」としての力量に恐れ入ったのだった……。

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さて、時は流れ、その数か月後。
急に髪を切りたい衝動に駆られ、ロングヘアをばっさりカットした私のヘアスタイルは、過去一番短い「マッチ棒的短髪」に生まれ変わっていた。
そのことに触れられたくなかった私は、それからしばらくお店に行けなくなったのであった……。





余談その1:奥様とのその後

2023年現在、奥さまとはすっかり顔なじみに。
とは言え、度合い的には、せいぜいお会計前に「あ、こんにちは!」とご挨拶して下さるようになったり、「おねえさん、長さどうします?」などと“おねえさん呼び”して下さるようになったりした程度ではある。
……あ、でも一度余談として、「マム(洋菊)」は結構海外産が多いこと、国産菊に比べ茎が折れやすいことを教えて下さったな。結構勉強になったんだった。そうだった。

ちなみに、異例の酷暑だった今年。
おそらくその暑さのせいかと思われるのだが、さすがの奥さまの超絶マルチタスクシステムにも「おつりをすっかり渡し忘れる」というバグが発生。
意外な方のケアレスミスに私はちょっと驚いたが、逆にちょっとホッとしたりなんかもしたのだった。



余談その2:突如変わる私の髪型

私が髪型を変える時は、いつも「ある日突然、ドラスティックに」行われる。
理由は特にない。変えたかったから変えただけだ。
けれど、周囲の人々はその変容っぷりにいつも仰天。以前の髪型を名残惜しんだり、新しい髪型にツッコミを入たり、理由を聞いて来たりする。
それがちょっと面倒だ。

一般的に、女性はちょっとでも髪型が変わったら気づいて欲しいらしいが、私は真逆。断然放っておいて欲しい派である。
失敗しようが似合ってようが、人に何と言われようが(高校の時にパーマをかけたら、中学時代の同級生男子に「それ、似合ってると思ってるのか!?」と言われたりとか、色々あった)、自由に変えまくって自分さえ楽しめればそれでいいのだ。

だから、触れても欲しくなかったりなんかする。
だから、しばらくお花屋さんには行けなかったのである……。


※ちなみに、以下👇は歴代「驚かれた髪型」の図です。





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