おもいがけぬおこぼれを分けてくださった母娘さん(2001年 32歳)

「動物と触れ合いたい……」
ある日、旦那は土気色の顔で切なる思いを告げた。
ちなみに、土気色になる程に疲弊していた理由は、転職早々、連日会社で寝泊まりせねばならぬ激務となったからである。

「ならば」と情報収集を始めた私。
お隣の市で開催される「犬と猫の大型イベント」をたまたま発見、報告した。
「直近だとこれしか無かったよ。どんなイベントかもイマイチよく分からないし、実際触れ合えるかも分からないけど……」
「そっか。でもいいよ。見るだけでもいいから」
とのことだったので、何はともあれ共に向かうことにした。

……いや、本当は旦那単独で行って欲しかった。
私はそんなに犬にも猫にも特別な思い入れはないし(かわいいとは思う)、その頃は急な転職準備などで懐《ふところ》事情が芳《かんば》しくなかったから。
でも、仕方なかった。憔悴しきった人を前に、「付き添い」という柔軟な対応をとるしかなかったのである。

さて、会場はコンベンションセンターの一画だった。
事前情報では割と広いホールだったので大混雑を覚悟していたが、実際そこまでではなく、チケット売り場にもわずかな人が列を成しているほど。
けれど、これから混むかもしれないので、私は取り急ぎ、疲れ果ててまっ白状態の旦那を残し、スタスタとチケット売り場へ向かった。

とそこへ、10時の方向からツーッと静かな人影。それとなく行く手を遮った。
思わず足を止め視線を移すと、穏やかそうな雰囲気のご婦人であった。
そして少し後方には、娘さんらしき方が神妙な面持ちで佇んでおられた。

突然のこと、しかも娘さんの神妙さがちょっと気になった私は、なにごとかと身構えた。
けれど、どこまでも穏やかなご婦人は、一呼吸置いておっしゃった。
「……あの…チケットが余っているので、良かったら差し上げます。どうぞ……」

「ええっ!!」しずしずと差し出されたチケットを前に、更に驚き固まる私。
躊躇して手を出さずにいると、「どうぞ、ご遠慮なく!」とにこやかに後押しして下さったので、満面の笑顔でお礼を伝え、ありがたく頂戴したのだった。

その後、チケット売り場からニッコニコで戻って来た私に、旦那は待ってましたとばかりに、開口一番聞いた。
「何か話しかけられてたね。どうしたの!?」
そして事の成り行きを聞くと、己の疲労も忘れ、
「えっ!?そんな、たまたま!?そんなことありえない!」
と、しつこいほど驚愕した。

……いや、確かに私もそう思う。でも実際にありえたのだ。
このように、ありがたい方々が実際に存在されているのである(合掌😌🙏)。


余談:実際のイベント内容

イベントは、展示販売がメインであった。
しかし、一部ふれあいコーナーもあり、旦那も多少癒されたようである。
何より、あまり乗り気ではなかった私の分のチケット代が浮いたことが、本当に感謝であった。




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