プチ国際交流を与えて下さった女性(2014年45歳)

秋雨の候。
アルバイト帰りの私は、撥水効果のあるお手軽アウターを求め、横浜駅直結の商業施設内へ向かった。
まず訪れたのは、割といろんな所で見かける大型雑貨チェーン店。
若者が好みそうな化粧品から衣類やバッグ、文具に食器・食品など、様々なものが取り揃えられている。

で、とってもありがたいのが、衣類をどんなに物色していても店員さんが接客に来ないこと。
マイペースに見ることが出来るので、サクッと買い物をしたい時はとても便利なのである。

という訳で、早くもトレンチ型のレインコートを発見した私。
試着室もある中ちょっと不行儀かもしれないが、時間も無いので、手近な姿見《すがたみ》に、バッグと脱いだモッズコートを大雑把にバッサリひっかけ、サッと試着した。

「うーん、意外と袖が大きいな~。他はいいんだけど……」
袖の大きさを許容するか否か、しばしぼんやり検討する……。

とそこへ、ツカツカとした足音。……やや左後方でピタッと停止した。
『うわー珍しく店員さん来ちゃった!?試着室使わないとダメ?』
少々焦りながらチラと振り返る。
するとそこには、お仕事帰り風の外国人女性の姿。しかも、雑然とした “姿見”をガン見されており、その視線と表情たるや万引きGメンばりの鋭さなのである。

『え!?ナニ……何ですか?』
瞬間体がこわばり、目には見えない防御壁が張られる。
しかし彼女は、そんな私に構うことなく尚も1点だけを見つめ、指を差しながら英語で尋ねて来られた。
「これは、雨をはじきますか?風だけ?(意訳)」
そうやって指さされたモノとは……私のモッズコートだった。

『え…ナゼそれを聞きたい?』
ただでさえ英語が苦手なのに、謎の問いかけという追い打ち。
焦った脳は混乱し、脂汗を噴出した。
……だ、だがここはひとつ、真剣な彼女に真剣に返さねばなるまい。
「Wind is OK.Rain is NO.」
私は持てる語学力を振り絞り、カタコト英語を繰り出した。

それが通じたのか否か、彼女は「Oh!」と軽く声をあげた。
ホッとする私。しかし、ガン見は止まらず……。
そしたら何と、今度は私のコートに手を伸ばし、少しずつ広げ始めたのである!

『あっ!』
そこでようやく気がついた。
『もしかして商品と勘違いしてる!?』
慌てた私は、咄嗟に「It’s mine」というバリバリの基礎英語を放った。
そして、彼女がようやくコートから目を離した隙に(←但し、手はまだコートを離さず)、『着て来たよ!』というジェスチャーで、猛アピールを試みた。

「……………」
彼女は、そのおとぼけジェスチャーを、あくまで真剣にしばし見入った。
……がっ!突如雷に打たれたように、ハッと弾け驚かれた。
「Oh‼Sorry!!」
慌ててコートから手を離す彼女。ジェスチャー豊かに、
「ごめんなさいね!売り物かと思った!いやだわ~私ったら!!……でも、これとても素敵ね!(←全て英語。意訳)」
と矢継ぎ早に告げ、照れに照れまくると、名残惜しそうにコートに視線を残しながら笑顔で去って行かれた。
……私もそんな彼女を笑顔で見送った。

いやぁ、突然のドキドキ体験だったが、なんとも微笑ましい勘違い。
「とってもチャーミングなリアクションだったな~。ウフフ」
国際交流が乏しい私とっては、外国の方の“生《なま》恥じらい”は非常に新鮮で、なんかちょっと見聞が広がった気分。
「そうか、外国の方もあんなに照れたりするんだ!」とすら思ったのだった(←当たり前)。

それにしても、私のモッズコートの内側は毛玉になっていたのだが、彼女は広げた時に気づいただろうか。もしかしたら今頃、「そう言えば、結構毛玉が出来てたなー」なんて思っているのではないか……。

そんな恥ずかしさとともに英語力の無さも痛感した、インターナショナルなハプニングであった。


気の利いた返答をしたかったのだが、全く出て来ず…。英語力の無さを痛感。





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なぜか見知らぬ人に話かけられやすい私と、なにげなく出逢った市井の皆さんとで紡いだ「思い出エッセイ」を公開中。 それらを通して「人本来の素晴らしさや魅力」「感謝や学び」などをお伝えしてゆけたらと思っています(全100話位)。 一応毎日更新予定😅。noteさんでも同時公開しています😊 どうぞよろしくおねがいします😌